靴を買う
砂が入りにくく
水濡れにも耐え
履きやすく脱ぎやすく
留め具もベルトも何もなく
長時間の徘徊でも擦れず
洗えばすぐ乾いてまた履ける
そんな靴を
必要としていた時期が
わたしにも ある
出産で傷んだ身体に鞭打ち
朝まで乳児をあやすための
ひねもす幼児を遊ばせるための
どこまでも自転車を漕ぐための
最適な靴を求めては
いつまでも続くダム造りの合間に
靴の中に入った砂を振り落とし
ひび割れた靴底に嵩む出費を思っては
暗い気持ちになり
強くて便利な靴を欲して
でも
出会えなくて
気がつけば
水たまりにも砂場にも
子どもは 自分ひとりで飛び込めるようになっていた
もう
靴探しに条件は 要らない
好きな靴を買えばいい
素敵な靴を履けばいい
そう思ったのに
わたしは
乳幼児育てに便利な靴を
いまだに 探してしまっている